2026年6月29日

こんにちは。駒沢自由通り皮膚科です。
- 脇汗が止まらない
- 服の汗ジミが気になる
- においが心配で人前で腕を上げられない
このようなお悩みは、実は腋窩多汗症(えきかたかんしょう)という治療できる病気
であることが多いです。「体質だから仕方ない」と思われがちですが、現在は保険適用でしっかり治療ができる時代です。
腋窩多汗症とは?|ただの汗かきとの違い
腋窩多汗症とは、明らかな原因となる病気がないにもかかわらず、日常生活に支障が出るほど脇汗が多い状態が持続することを指します。「汗っかき」とは違い、生活に支障が出るレベルの発汗であることが重要で、緊張やストレスで悪化することも多いですが、それ自体が原因ではありません。
▼このような症状があれば要注意
- 安静時でも汗が出る
- 冬でも脇が湿っている
- 服に汗ジミができる
- 市販の制汗剤で改善しない
- 着替えを持ち歩いている
これらの症状が出ている方は、「体質」ではなく治療対象です。
汗のメカニズム|なぜ脇汗は止まらないのか
汗の放出は、神経によってコントロールされている生理現象です。
汗は、体温を一定に保つために体が自動的に行っている大切な働きです。
私たちの体は、暑い場所にいたり、運動をしたり、緊張したりすると体温が上がります。すると脳の中にある**視床下部(ししょうかぶ)**という体温調節の司令塔が、「体を冷やそう」と判断します。
その指令が自律神経(交感神経)を通じて皮膚にある**汗腺(かんせん)**へ伝わると、汗腺が血液中の水分やミネラルを取り込み、汗を作って皮膚の表面へ送り出します。これが汗です。
出てきた汗は、皮膚の上で蒸発するときに熱を奪います。たとえば濡れたタオルが乾くときにひんやりするのと同じ原理です。この「気化熱」によって体の熱が下がり、体温が上がりすぎるのを防いでいます。つまり汗は、体を守るための自然な冷却システムなのです。
また、汗は暑いときだけでなく、緊張したときに手のひらや足の裏、わきの下に出やすくなることがあります。これは体温調節とは少し異なり、精神的な刺激に対して自律神経が反応して起こる汗です。
腋窩多汗症の本質は、この神経伝達が過剰になっている状態です。
つまり、汗腺が多いのではなく、中枢からの命令が強すぎる状態と考えられます。
汗とにおいの関係|なぜ同時に改善するのか
汗の分泌を止めることで、においも同時に改善することが多いです。
■汗は本来「無臭」、においの正体は
エクリン汗腺から出る汗は、ほぼ水分で、本来はにおいがありません。このエクリン汗腺は一部の部位を除いて全身に分布しています。分泌された汗が、皮膚の皮脂や垢と混ざり、それを最近が分解することによりニオイが発生すると言われています。
■脇がにおいやすい理由
脇の下には、アポクリン汗腺(腋窩や陰部に多く、脂質やタンパクを含む汗を分泌)が分布しており、より強いニオイを放つことが多いです。また、汗の量に比例してニオイも強くなる傾向があります。汗が多く、湿度が上がると細菌も増えます。結果として、汗の量に比例してニオイが発生します。
従って、
汗の量を減らす=においも減る
実際に「汗治療だけでにおいも改善」するケースは非常に多いです。
腋窩多汗症の診断|どのくらいで治療対象?
■重症度の目安(HDSS)
原発性腋窩多汗症の重症度は、多汗症疾患重症度評価度(hyperhidrosis disease severity scale:HDSS)を使って評価します。発汗が日常生活にどれだけ影響しているか をシンプルに評価する指標です。外来でもよく使われ、治療適応や効果判定の基準になります。
- 気にならない
- 我慢できる
- 日常生活に支障
- 著しく支障
一般的に、HDSS 3以上で「治療介入を積極的に検討」するのが一般的です。
▪️効果判定
効果判定の目安として、1段階以上の改善があれば有効と判断します。2段階の改善で著効していると判断します。
腋窩多汗症の治療|保険適用あり
現在は外用薬が第一選択です。保険適応の外用剤は2種類あります。
エクロックゲル(保険適用)
適応年齢は12才以上です。ムスカリン受容体をブロックし、アセチルコリンの作用を抑制することで、汗を出しなさいという刺激が局所に届くことを防ぎます。= 汗を出す指令を止める
1日1回の塗布で持続効果が得られ、安定した発汗抑制が期待できます。
また、外用による刺激が少ないのも特徴です。
ラピフォートワイプ(保険適用)
適応年齢は9才以上です。ムスカリン受容体をブロックし、アセチルコリンの作用をブロックすることで発汗を止めます。
1日1回の外用で効果を発揮し、さっぱりした使用感が特徴です。1回使い切りの個包装となっており、清潔を保ちやすく、持ち運びにも便利です。
エクロックとラピフォートの違い
| 項目 | エクロック | ラピフォート |
| 年齢 | 12歳以上 | 9歳以上 |
| 使用感 | しっとり | さっぱり |
| 特徴 | 安定効果 | 手軽さ |
ボトックス治療|非常に強力な治療
■適応年齢
原則12歳以上(症状により保険適用あり)
アセチルコリン放出を抑制することで、 汗腺への発汗信号を遮断します。その結果、汗を出す信号が局所に伝わることなく発汗が停止します。効果発現まで、4、5日を要しますが、その効果は4〜6ヶ月持続します。発汗を大幅に抑制することが可能です。。施術時間は10〜15分程度で、日常生活への影響も少なく、手軽に受けられることが特徴です。
手術療法(最終手段)
- 交感神経遮断術(ETS)
- 汗腺の除去
⚠ 注意
ただし、代償性発汗として他部位の汗が増えたり、不可逆性なので注意が必要です。 現在はほとんどが外用+ボトックスで対応可能です。

よくある質問
Q. 市販の制汗剤との違いは?
一般的な制汗剤には、塩化アルミニウム系成分が含まれていることが多く、汗の出口に“栓”をすることで汗を減らします。軽い汗、ニオイ予防、夏場のエチケットとしては十分ですが、服がびっしょりになる程度の多汗症では、十分な効果が出ないことがあります。
一方、エクロックやラピフォートは、汗の出口ではなく、「汗を出しなさい」という神経の信号そのものを抑える薬です。汗は、交感神経から出る「アセチルコリン」という物質が汗腺を刺激することで分泌されます。この刺激をブロックすることで、汗を減らします。
Q. 子どもでも治療できる?
ラピフォートは9才のお子さんから適応になります。
腋窩多汗症は何科に行けばいい?
皮膚科でエクロック、ラピフォートともに処方できます。駒沢自由通り皮膚科は、腋窩のボトックスにも対応しています。
当院からのメッセージ
腋窩多汗症は生活の質を大きく下げる疾患ではありますが、現在は、医学的にしっかり治療ができる時代です。服を自由に選べる、人前で自然に振る舞える、ニオイの不安がなくなるといった変化を多くの方が実感されています。
「こんなことで受診していいのかな」と思わず、お気軽にご相談ください。