2026年6月29日

「手汗がひどくて、人前で手をつなぐのが気になる」
「ノートやプリントが湿ってしまう」
「スマホやパソコン操作で困る」
「緊張していないのに、いつも手のひらが汗ばんでいる」
このようなお悩みはありませんか?
手のひらに大量の汗をかく状態を、「原発性手掌多汗症(げんぱつせいしゅしょうたかんしょう)」といいます。
実は決して珍しい病気ではなく、学生さんから社会人まで、多くの方が悩まれています。
しかし、「体質だから仕方ない」「相談するほどではない」と我慢している方が非常に多いのが現状です。
今回は、駒沢自由通り皮膚科として、原発性手掌多汗症の原因や症状、治療法について分かりやすく解説します。
原発性手掌多汗症とは?
原発性手掌多汗症とは、手のひらに必要以上の汗をかいてしまう病気です。
通常、汗は体温調節のために出ますが、原発性手掌多汗症では、暑さとは関係なく大量の汗が出ることがあります。
例えば、
- 紙がふやける
- ペンが滑る
- 握手を避けたくなる
- キーボードやスマホ画面が濡れる
- ゲームや楽器演奏に支障が出る
- テスト用紙が湿る
など、日常生活に影響が出ることも少なくありません。
症状は10代前後から始まることが多く、長年悩み続けている方もいらっしゃいます。
手汗は「緊張しやすい性格」が原因?
「緊張しやすいから汗をかくんですよね?」と聞かれることがあります。
確かに緊張で汗は増えますが、原発性手掌多汗症は単なる性格の問題ではありません。
汗を出す“エクリン汗腺”に対して、交感神経が過剰に反応してしまうことが原因と考えられています。
つまり、
- 汗をかきやすい体質
- 神経の反応性
- 遺伝的要素
などが関係している“病気”です。
実際、ご家族にも同じ症状があるケースは珍しくありません。
原発性手掌多汗症のセルフチェック
以下に当てはまるものはありますか?
- 手汗が6か月以上続いている
- 左右両方の手に汗をかく
- 週に1回以上、多量の汗が出る
- 日常生活に支障がある
- 家族にも手汗体質の人がいる
- 寝ている間は症状が軽い
複数当てはまる場合、原発性手掌多汗症の可能性があります。
「ただの汗」と軽く見られやすい病気です
原発性手掌多汗症は、見た目では重症度が伝わりにくい病気です。
ですが、ご本人にとっては、
- 人と接することへの不安
- 学校生活でのストレス
- 仕事中の困りごと
- 対人関係への影響
など、精神的負担が非常に大きいことがあります。
特に学生さんでは、
- テスト用紙が湿る
- 友達と手をつなげない
- 部活動に影響する
といった悩みにつながることもあります。
「こんなことで受診していいのかな」と遠慮される方も多いですが、実際には治療できる時代になっています。
原発性手掌多汗症の治療法
外用薬(アポハイドローション)
現在、原発性手掌多汗症では保険適用の治療薬があります。
代表的なのが、アポハイドローションです。
12才から使用可能でで、1日1回の外用により、汗を出す神経伝達をブロックすることで、汗の量を抑える治療です。
アポハイドローションの注意点
一方で、副作用として、
- 手の赤み、かゆみ
また、抗コリン作用により、
- 口の渇き
- 便秘
- 目のかすみ
- 動悸
- 尿が出にくい
などが起こることがあります。
上記症状があらわれた場合、外用を中止し医療機関を受診してください。外用を中止することで副作用が消退することが多いですが、我慢して使い続けるなど自己判断での継続は、症状の悪化を招く恐れがあります。
アポハイドローションを使えない方(禁忌)
アポハイドローションは比較的使いやすい薬ですが、すべての方に使用できるわけではありません。以下に該当する方は使用できません。
閉塞隅角緑内障の方
抗コリン作用によって眼圧が上昇し、症状が悪化する可能性があります。
前立腺肥大などによる排尿障害がある方
尿が出にくくなる「尿閉」を起こすリスクがあります。
重症筋無力症の方
筋力低下が悪化する可能性があります。
腸閉塞・麻痺性イレウスのある方
腸の動きがさらに低下する恐れがあります。
重い心疾患のある方
頻脈や動悸が出る可能性があるため、慎重な判断が必要です。
薬剤アレルギーの既往がある方
アポハイドの成分でアレルギーを起こしたことがある方は使用できません。
アポハイドで注意が必要な方
「完全に使えない」わけではありませんが、慎重な使用が必要な方もいます。
妊娠中・授乳中の方
安全性データが十分ではないため、必要性を慎重に判断します。
高齢の方
抗コリン作用による、
- 口渇
- 便秘
- 排尿障害
- ふらつき
などが出やすくなる場合があります。
手荒れ・湿疹・傷がある方
刺激感が強く出ることがあります。
特に、
- あかぎれ
- 湿疹
- 手湿疹
- 皮膚炎
がある場合は、しみたり悪化したりすることがあります。
使用時の注意点
塗った後に目を触らない
非常に大切なポイントです。
塗布後に目を触ると、
- 瞳孔が開く
- まぶしい
- ピントが合いにくい
などの症状が出ることがあります。
コンタクトレンズの着脱は、塗る前に済ませるのがおすすめです。
アポハイドは、就寝前に乾いた手に塗り、そのまま就寝、翌朝に洗い流すという使い方をします。
アポハイドの費用は?
アポハイドローションは保険適用の薬です。
薬価は1gあたり約539.9円とされています。
実際の自己負担額は、
- 年齢
- 保険負担割合
- 処方本数
によって変わりますが、3割負担の場合、4.5mlのボトルであれば1本あたり、700円程度。18mlボトルで1本あたり2,800円程度の自己負担となります。
※診察料・処方料は別途かかります。
イオントフォレーシスという治療
手汗治療では、イオントフォレーシスという方法が使われることもあります。水道水を入れた専用の容器に手を浸し、弱い電流を流すことで汗の分泌を抑える治療です。痛みはほとんどなく、保険適用で受けられる場合があります。1回で効果が持続するわけではありませんが、定期的に治療を続けることで発汗量の減少が期待できます。薬が使いにくい方や、お子さま、外用治療で効果不十分な方などの選択肢となる安全性の高い治療法です。
重症例では手術が検討されることも
重症の手掌多汗症では、「胸腔鏡下交感神経遮断術(ETS)」という手術が行われる場合もあります。
ただし、
- 代償性発汗(別の部位の汗が増える)
- 元に戻せない
など注意点もあるため、慎重な検討が必要です。
まずは外用治療から始めるケースが一般的です。
子どもの手汗も相談して大丈夫です
実は、手掌多汗症は小学生〜中高生くらいから悩み始める方が多い病気です。
ですが、
- 「成長期だから仕方ない」
- 「気にしすぎでは?」
- 「そのうち治る」
と言われ、相談できずにいるケースも多く見受けられます。
手汗は、周囲から見えにくい分、本人だけが強く悩んでいることがあります。
当院では、お子さまの診察でも、できるだけ緊張せず相談できる雰囲気を大切にしています。
原発性手掌多汗症は「相談していい病気」です
汗の悩みは、とてもデリケートです。
「これくらいで受診していいのかな」と迷われる方も多いですが、日常生活で困っている時点で、十分相談してよい症状です。
実際、治療を始めることで、
- 人前での不安が減った
- 学校生活が楽になった
- 仕事中のストレスが減った
と感じられたら良いですよね。
駒沢自由通り皮膚科では
駒沢自由通り皮膚科では、原発性手掌多汗症について、症状の程度やライフスタイルに合わせた治療をご提案しています。
手汗のお悩みは、周囲に理解されにくいからこそ、一人で抱え込んでしまいやすい症状です。
「相談するほどではないかも」と思っている段階でも、ぜひお気軽にご相談ください。
患者さまが少しでも日常を過ごしやすくなるよう、一緒に治療を考えていきます。