2025年9月25日

ニキビに悩んでいる方の多くが、「皮膚科と美容皮膚科、どちらに行くべきか」という疑問を持っています。実際、同じニキビ治療でも、皮膚科と美容皮膚科では治療方法や費用が大きく異なります。
私は皮膚科専門医として長年にわたり多くのニキビ患者さんを診てきました。今回は、皮膚科と美容皮膚科それぞれのニキビ治療の特徴や違いについて詳しく解説します。
皆さまのニキビの状態に合わせて最適な治療法を選ぶための判断材料となれば嬉しいです。

皮膚科と美容皮膚科の根本的な違い
まず、皮膚科と美容皮膚科の違いを明確にしておきましょう。実は両者の間には、治療の目的や方法、費用面で大きな違いがあります。
皮膚科は「皮膚病の治療・治癒」を目的とした医療機関です。ニキビも「尋常性痤瘡(じんじょうせいざそう)」という皮膚疾患として扱われ、保険適用の治療が行われます。
一方、美容皮膚科は「美容治療、美の追求」を目的とした医療機関です。ニキビの治療だけでなく、ニキビ跡の改善や肌質の向上など、美容面での悩みを解決することを目指しています。
両者の主な違いは以下の4点です。
- 治療の目的:皮膚科は「病気の治療・治癒」、美容皮膚科は「美容治療、美の追求」
- 対象疾患:皮膚科は皮膚疾患全般、美容皮膚科は美容に関連した皮膚の問題
- 治療方法:皮膚科は内服薬・外用薬・注射など、美容皮膚科はそれらに加えてレーザーなどの機器治療
- 保険適用範囲:皮膚科は健康保険適用、美容皮膚科は基本的に健康保険適用外
いかがでしょうか?皮膚科と美容皮膚科の違いが少しイメージできましたか?
同じニキビ治療でも、皮膚科では今できているニキビが治る、もしくはニキビが少なくなるまでを治療とするのに対して、美容皮膚科ではニキビの治療だけでなく、ニキビ跡やニキビの再発予防まで解決することができるのです。
皮膚科のニキビ治療とその特徴
皮膚科でのニキビ治療は、保険適用の範囲内で行われるため、比較的低コストで治療を受けることができます。自己負担額が3割で済むため、経済的な負担が少ないのが大きな特徴です。
皮膚科では、厚生労働省が認可した薬を用いてニキビ治療を行います。今あるニキビを早く鎮静化し、ニキビの悪化を防ぐことが可能です。
皮膚科で処方される代表的なニキビ治療薬には、以下のようなものがあります。
外用薬(塗り薬)
- ディフェリンゲル(アダパレン):皮膚のターンオーバーを促進し、毛穴の詰まりを改善。白ニキビに特に効果が高い
- ベピオゲル・ベピオローション(過酸化ベンゾイル):毛穴の詰まりを改善し、ニキビ菌への抗菌作用も持つ
- デュアック配合ゲル:過酸化ベンゾイルとクリンダマイシン(抗菌薬)の合剤
- エピデュオゲル:過酸化ベンゾイルとアダパレンの合剤
- 抗菌薬の外用薬:赤ニキビに対して使用
内服薬
- 抗菌薬:炎症を起こしている赤ニキビに効果的
- 漢方薬:体質改善を目的として使用
- ビタミン剤:皮膚の健康維持を助ける
皮膚科での治療は、臨床試験で効果が実証されているものばかりです。例えば、ベピオゲルの臨床試験では、1年程度でニキビの数の減少率が約70%に達しており、52週後も効果が持続しています。
ディフェリンの臨床試験でも、3か月後にニキビが改善した方は100人中67人(50%以上炎症性ニキビが減少した人を改善とした場合)、12カ月後も効果は持続するという結果が出ています。
このように、適切に使用すれば保険治療だけでほとんどのニキビが改善しますし、長期的な予防効果も実証されています。
皮膚科治療のメリットは、費用が安く済む点と、効果が科学的に証明されている点です。一方、デメリットとしては、保険適用の治療に限られるため、効果があっても保険認可されていない薬は使用する事ができません。

美容皮膚科のニキビ治療とその特徴
美容皮膚科でのニキビ治療は自由診療となり、全額自己負担となります。しかし、多彩な治療メニューを組み合わせることで、ニキビをより効果的に、そして美しく治すことができる可能性があります。
美容皮膚科では、海外で認可されている安全性の高いニキビ治療薬を処方することや、肌を内側から活性化させる美肌治療が可能です。そのため、ニキビの根本原因にしっかりとアプローチでき、ニキビの再発を防止することができます。
美容皮膚科で受けられる代表的なニキビ治療には、以下のようなものがあります。
薬物療法
- イソトレチノイン(アキュテイン):重度のニキビに効果的な内服薬。皮脂の分泌を抑え、毛穴の詰まりを改善する
- 高濃度レチノイド外用薬:毛穴の詰まりを効果的に改善する
機器を用いた治療
- ケミカルピーリング:古い角質を除去し、肌のターンオーバーを促進
- 光線治療:ニキビの原因菌を殺菌し、炎症を抑える
- ダーマペン:微細な針で肌に小さな穴を開け、コラーゲンの生成を促進
- レーザー治療:皮脂腺に作用し、皮脂の分泌を抑制
これらの治療法を組み合わせることで、ニキビだけでなく、ニキビ跡の赤みや凹みも改善することが期待できます。
例えば、飲むニキビ治療薬「イソトレチノイン」と肌質を改善する「ケミカルピーリング」を併用すれば、重度のニキビやニキビ跡の赤みも鎮静化することが期待できます。
また、凸凹したニキビ跡に対しては、ダーマペンとコラーゲンピールを組み合わせた「ヴェルベットスキン」や、ダーマペンとPRP(再生治療)を組み合わせた治療などが効果的です。
美容皮膚科のメリットは、多彩な美肌治療メニューがあり、目指したい理想の肌を実現するための治療が可能な点です。一方、デメリットとしては、保険適用外のため費用が高額になる点が挙げられます。
どんな状態のニキビにはどちらの治療が適しているか
ニキビの状態によって、皮膚科と美容皮膚科のどちらを選ぶべきかが変わってきます。ここでは、ニキビの症状や進行具合に応じた適切な選択肢を紹介します。
皮膚科を選ぶべきケース
- 初めてニキビができた場合:まずは保険診療で基本的な治療を受けるのがおすすめ
- 軽度〜中等度のニキビ:赤ニキビが顔全体で10個以下、または10〜40個程度の場合
- 費用を抑えて治療したい場合:保険適用で経済的負担を軽減できる
- ニキビが再発しにくい体質の方:基本的な治療で十分な効果が期待できる
美容皮膚科を選ぶべきケース
- 皮膚科での治療で効果が不十分だった場合:保険治療で改善しないニキビには、より強力な治療が必要
- ニキビ跡が気になる場合:赤みや凹みなどのニキビ跡の改善には美容皮膚科の治療が効果的
- 早く確実に治したい場合:複数の治療法を組み合わせることで、より効果的な治療が可能
私の臨床経験から言えることは、初めてニキビになって医療機関を受診する場合は、まず皮膚科を受診することをおすすめします。
軽度のニキビであれば、保険適用の外用薬で十分に改善することが多いからです。実際、適切に使用すれば保険治療だけでほとんどのニキビが改善しますし、長期的な予防効果も実証されています。
一方で、「さまざまな治療を試してみたものの、なかなか良くならない」「ニキビ跡が気になる」という場合は、美容皮膚科での治療を検討する価値があります。
治療費の違いと費用対効果
皮膚科と美容皮膚科では、治療費に大きな差があります。ここでは、それぞれの治療費の目安と、費用対効果について解説します。
皮膚科の治療費
皮膚科での治療は健康保険が適用されるため、自己負担額は3割となります。一般的な治療費の目安は以下の通りです。
- 初診料:1,000〜2,000円程度
- 再診料:500〜1,000円程度
- 外用薬(1本):500〜1,500円程度
- 内服薬(1週間分):1,000〜2,000円程度
1ヶ月の治療費の合計は、外用薬と内服薬を併用した場合でも5,000〜10,000円程度に収まることが多いです。
美容皮膚科の治療費
美容皮膚科での治療は自由診療となるため、全額自己負担となります。治療費の目安は以下の通りです。
- イソトレチノイン治療:1ヶ月あたり15,000〜30,000円程度
- ケミカルピーリング:1回あたり10,000〜20,000円程度
- 光線治療:1回あたり15,000〜30,000円程度
- ダーマペン治療:1回あたり20,000〜40,000円程度
- レーザー治療:1回あたり20,000〜50,000円程度
美容皮膚科での治療は、複数の治療を組み合わせることも多いため、1ヶ月の治療費は30,000〜100,000円以上になることもあります。
費用対効果という観点では、軽度〜中等度のニキビであれば、まずは皮膚科での保険治療を試みるのが合理的です。一方、重度のニキビやニキビ跡の改善を目指す場合は、費用は高くなりますが、美容皮膚科での治療がより効果的な場合が多いです。
ただし、美容皮膚科でも初回は保険診療で基本的な治療を行い、それでも改善しない場合に自費診療を検討するという段階的なアプローチをとるクリニックもあります。
ニキビ治療の選び方と私の推奨
皮膚科専門医として、私が推奨するニキビ治療の選び方をお伝えします。
ステップ1:まずは皮膚科での保険治療から
初めてニキビ治療を受ける場合は、まず皮膚科を受診し、保険適用の治療を試みることをおすすめします。軽度〜中等度のニキビであれば、保険治療だけで十分に改善することが多いからです。
皮膚科では、ディフェリンゲルやベピオゲルなどの外用薬を中心に、症状に応じて内服抗菌薬なども組み合わせた治療が行われます。これらの治療は、臨床試験で効果が実証されており、適切に使用すれば多くのニキビが改善します。
ステップ2:効果が不十分な場合は美容皮膚科も検討
保険治療を正しく3〜6ヶ月程度続けても効果が不十分な場合や、ニキビ跡が気になる場合は、美容皮膚科での治療も検討する価値があります。
特に、以下のような場合は美容皮膚科での治療が効果的です。
- ニキビが繰り返しできる
- ニキビ跡(赤み・凹み)が気になる
- 早く確実に治したい
ステップ3:医師と相談しながら最適な治療を選ぶ
最終的には、医師と相談しながら、あなたのニキビの状態や予算、ライフスタイルに合った最適な治療法を選ぶことが大切です。
私の臨床経験では、軽度から中等度のニキビであれば保険治療だけで十分ですが、中等度〜重度のニキビや、ニキビ跡の改善を目指す場合は、保険治療と自費治療を組み合わせたアプローチが最も効果的だと考えています。
例えば、炎症を抑えるための基本的な治療は保険診療で行い、肌質改善やニキビ跡の治療は自費診療で行うといった組み合わせです。
重要なのは、「安いから」「高いから」という理由だけで治療法を選ぶのではなく、あなたのニキビの状態に最適な治療法を選ぶことです。
まとめ:あなたに最適なニキビ治療を選ぼう
ニキビ治療において、皮膚科と美容皮膚科はそれぞれ異なる特徴と役割を持っています。どちらが「良い」「悪い」というわけではなく、あなたのニキビの状態や目標、予算に応じて最適な選択肢が変わってきます。
皮膚科は保険適用で経済的負担が少なく、科学的に効果が証明された治療を受けられる点が魅力です。軽度〜中等度のニキビであれば、まずは皮膚科での治療を試みるのが合理的でしょう。
一方、美容皮膚科は費用は高くなりますが、多彩な治療メニューを組み合わせることで、ニキビの根本原因にアプローチし、ニキビ跡の改善も含めたトータルな肌質改善が期待できます。重度のニキビやニキビ跡の改善を目指す場合は、美容皮膚科での治療も検討する価値があります。
最終的には、医師と相談しながら、あなたのニキビの状態や予算、ライフスタイルに合った最適な治療法を選ぶことが大切です。
ニキビは放置すると跡が残ることもあるため、早めの治療が重要です。もしニキビでお悩みなら、まずは皮膚科を受診し、専門医に相談してみることをおすすめします。
当院(駒沢自由通り皮膚科)では、皮膚科専門医による丁寧な診察と、患者さん一人ひとりに合わせた最適なニキビ治療を提供しています。ニキビでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

監修:白石 英馨(しらいし ひでか)
駒沢自由通り皮膚科 院長・日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
東京慈恵会医科大学医学部卒業後、同大学附属病院や関連病院にて皮膚科診療に従事。アトピー性皮膚炎やニキビといった一般皮膚疾患から、ホクロ・イボの外科的治療、美容皮膚科領域まで幅広く経験を積む。
2025年3月、世田谷・駒沢に「駒沢自由通り皮膚科」を開院。小さなお子さまからご高齢の方まで、地域に根ざした“かかりつけ皮膚科”として丁寧でわかりやすい診療を心がけている。
- 所属学会:日本皮膚科学会、日本美容皮膚科学会 ほか
- 専門分野:皮膚科一般、小児皮膚科、美容皮膚科、日帰り皮膚外科手術