2025年9月25日

ニキビの基礎知識〜正しく理解して効果的に対策しよう
ニキビは思ったより複雑な皮膚疾患です。単なる「青春のシンボル」と軽視されがちですが、実は医学的には「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」という皮膚の病気なのです。
年齢に関係なく、いくつになってもニキビはニキビです。思春期だけでなく、大人になってからも悩まされる方が多いのが現状です。
ニキビができる主な原因は、次の3つが挙げられます。
- 過剰な皮脂の分泌
- 毛穴の出口が角化してつまる
- ニキビ菌(アクネ菌)の繁殖
これらの要因が複合的に作用することで、ニキビは発生・悪化していきます。特に皮脂腺の発達している顔、胸、背中などに集中して現れるのが特徴です。

ニキビの進行段階と種類を知ろう
ニキビには進行段階があります。早期に適切な対処をすることで、悪化を防ぎ、ニキビ跡を残さずに治すことができます。
ニキビの進行段階は、初期の「面皰(めんぽう)」から始まり、炎症を伴う「丘疹(きゅうしん)」「膿疱(のうほう)」へと進行し、最終的に「瘢痕(はんこん)」というニキビ跡になることがあります。それぞれの段階で適切な対処法が異なるため、自分のニキビがどの段階にあるのかを知ることが大切です。
面皰(コメド)〜ニキビの初期段階
ニキビの始まりは「面皰(めんぽう)」、いわゆる「コメド」と呼ばれる状態です。毛穴の出口が角質でふさがれ、皮脂が溜まってしまった状態です。
コメドには「白頭面皰(白ニキビ)」と「黒頭面皰(黒ニキビ)」の2種類があります。この段階で適切なケアを行えば、炎症を起こす前に改善できる可能性が高いです。
炎症性ニキビ〜赤ニキビと黄ニキビ
コメドの状態から進行すると、ニキビ菌が増殖し炎症を起こします。赤く盛り上がった「丘疹(きゅうしん)」、いわゆる「赤ニキビ」の状態になります。
さらに悪化すると、膿がたまった「膿疱(のうほう)」、いわゆる「黄ニキビ」になります。この段階では痛みを伴うこともあり、自己処理せずに皮膚科を受診することをお勧めします。
炎症がさらに進行すると、皮膚の深い部分にまで及び、「嚢腫(のうしゅ)」や「結節(けっせつ)」と呼ばれる硬いしこりのようなニキビになることもあります。
思春期ニキビと大人ニキビの違い
思春期ニキビと大人ニキビは、同じニキビでも原因や特徴に違いがあります。適切な対策を行うためには、この違いを理解することが重要です。
思春期ニキビは主に過剰な皮脂分泌が原因となりますが、大人ニキビはホルモンバランスの乱れやストレス、生活習慣の乱れなど、複合的な要因が関わっていることが多いのです。
思春期ニキビの特徴
思春期ニキビは、主に10代から20代前半に多く見られます。思春期に増加する男性ホルモンの影響で皮脂の分泌が活発になることが主な原因です。
特徴としては、Tゾーン(おでこ、鼻、あご)を中心に広範囲に出現することが多く、オイリー肌の方に多い傾向があります。コメド(白ニキビ・黒ニキビ)が多いのも特徴です。
思春期ニキビの場合、適切なスキンケアと生活習慣の改善で改善することが多いですが、重症化すると瘢痕(ニキビ跡)を残すこともあるため、早めの対処が大切です。
大人ニキビの特徴
大人ニキビは、25歳以降に発生・再発するニキビを指します。女性に多い傾向があり、ホルモンバランスの変動、ストレス、睡眠不足、食生活の乱れなど、様々な要因が複合的に関わっています。
特徴としては、Uゾーン(頬、あご、口周り)に集中して現れることが多く、炎症を伴う赤ニキビや硬いしこりのようなニキビが中心です。また、繰り返し同じ場所にできやすいという特徴もあります。
大人ニキビは思春期ニキビよりも治りにくく、色素沈着やクレーターなどのニキビ跡を残しやすいため、早めの皮膚科受診をお勧めします。

効果的なニキビ治療法
ニキビ治療には様々な方法がありますが、ニキビの種類や症状によって最適な治療法は異なります。自己流のケアだけでは限界があるため、症状が改善しない場合は皮膚科を受診することをお勧めします。
皮膚科でのニキビ治療は、症状に合わせて長期的な治療計画を立てた上で行われます。敏感肌で何か症状のある人は先に肌を整えてからニキビ治療をするなど、場合によってはいくつかの処置を組み合わせて治療することもあります。
皮膚科での一般的なニキビ治療
皮膚科でのニキビ治療の基本は薬物療法です。主に以下のような治療法が用いられます。
- 外用薬(塗り薬):過酸化ベンゾイル、アダパレン、抗菌薬など
- 内服薬:抗菌薬、ホルモン剤、ビタミン剤など
- 処置:コメド圧出、ステロイド局注など
特に重症のニキビには、内服薬と外用薬を組み合わせた治療が効果的です。また、ニキビ跡に対しては、ケミカルピーリングやレーザー治療などが行われることもあります。
最新のニキビ治療技術
近年、ニキビ治療の技術は進化しており、様々な新しい治療法が登場しています。例えば、アビクリア(AviClear)というレーザー治療機は、ニキビ治療のレーザー治療機として世界で初めてFDA(アメリカ食品医薬品局)に承認された最新の治療機器です。
アビクリアは、ニキビの原因となる皮脂の過剰な分泌を抑制して、根本からニキビができにくい状態へ改善させます。皮脂腺に選択的に熱エネルギーを伝え、皮脂腺細胞を破壊することで、ニキビの発生を抑え長期的にニキビを改善する効果があります。
また、IPL光治療やケミカルピーリング、ハイドラパールなどの治療法も、ニキビや肌質の改善に効果があるとされています。
自宅でできるニキビケア
皮膚科での治療と並行して、日常的なスキンケアも重要です。正しいスキンケアを行うことで、ニキビの予防や改善に繋がります。
正しい洗顔方法
洗顔は1日2回(朝・晩)が基本です。ぬるま湯を使い、洗顔料を泡立ててから優しく洗いましょう。ゴシゴシとこすると肌に負担をかけ、バリア機能を低下させてしまいます。
洗顔後は清潔なタオルで軽く押さえるように水分を拭き取り、すぐに化粧水などで保湿を行いましょう。洗いすぎると皮脂を取りすぎてしまい、かえって皮脂分泌が活発になることもあるので注意が必要です。
ニキビに効果的な成分
ニキビケア製品には様々な有効成分が含まれています。自分のニキビの状態に合った成分を選ぶことが大切です。
- サリチル酸:角質除去効果があり、毛穴のつまりを解消
- グリコール酸:古い角質を除去し、肌のターンオーバーを促進
- 過酸化ベンゾイル:抗菌作用と角質剥離作用を有する
- レチノイド:毛穴のつまりを解消し、肌の再生を促進
- ニキビ菌を抑える成分:イオウ、亜鉛など
ただし、これらの成分は肌に刺激を与えることもあるため、自分の肌質に合ったものを選び、使用方法を守ることが重要です。敏感肌の方は特に注意が必要です。

ニキビと生活習慣の関係
ニキビは外側からのケアだけでなく、内側からのケア、つまり生活習慣の改善も重要です。特に食事、睡眠、ストレス管理はニキビに大きく影響します。
バランスの良い食事、十分な睡眠、適度な運動、ストレス管理などを心がけることで、肌の健康を内側からサポートすることができます。
食事とニキビの関係
食事とニキビの関係については様々な研究がありますが、高GI食品(血糖値を急上昇させる食品)や乳製品の過剰摂取がニキビを悪化させる可能性があるとされています。
特に糖分や脂肪分の多い食品、加工食品、辛い食べ物などは控えめにし、野菜や果物、良質なタンパク質を中心としたバランスの良い食事を心がけましょう。また、水分をしっかり摂ることも大切です。
ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、亜鉛などの栄養素はお肌の健康に良いとされていますので、これらを含む食品を積極的に摂りましょう。
睡眠とストレスの影響
睡眠不足やストレスは、ホルモンバランスを乱し、ニキビを悪化させる要因となります。特に大人のニキビはストレスとの関連が強いとされています。
質の良い睡眠を確保するために、就寝前のスマートフォンやパソコンの使用を控え、規則正しい生活リズムを心がけましょう。また、ストレスを溜め込まないよう、自分に合ったリラックス法を見つけることも大切です。
東京薬科大学の研究によると、ニキビとストレスには関連性があることが示されています。ストレスを適切に管理することで、ニキビの改善に繋がる可能性があります。
ニキビ跡の治療法
ニキビが治った後も、赤みや色素沈着、凹みなどのニキビ跡が残ることがあります。ニキビ跡の種類によって適切な治療法が異なるため、皮膚科医に相談することをお勧めします。
ニキビ跡は自然に消えるまで時間がかかることもありますが、適切な治療を行うことで早く改善することができます。
赤みや色素沈着の治療
ニキビ跡の赤みや色素沈着は、ニキビの炎症によって引き起こされます。これらは時間の経過とともに徐々に薄くなりますが、治療によって改善を早めることができます。
赤みや色素沈着に対しては、ビタミンC誘導体やハイドロキノンなどの美白成分を含む外用薬、ケミカルピーリング、レーザー治療などが効果的です。また、日焼け止めを使用して紫外線から肌を守ることも重要です。
特に色素沈着は、紫外線によって悪化することがあるため、日常的な紫外線対策が欠かせません。
凹みやクレーターの治療
ニキビによる凹みやクレーターは、皮膚の真皮層が損傷を受けたことによって生じます。これらは自然治癒が難しく、専門的な治療が必要になることが多いです。
凹みやクレーターに対しては、ダーマローラー、フラクショナルレーザー、ヒアルロン酸注入、自己脂肪移植などの治療法があります。これらの治療は複数回行うことで効果が現れることが多いです。
ニキビ跡の治療は早期に開始するほど効果的なので、気になる場合は早めに皮膚科を受診しましょう。
まとめ〜ニキビとの上手な付き合い方
ニキビは多くの人が経験する皮膚疾患ですが、正しい知識と適切なケアによって改善することができます。
ニキビの種類や原因を理解し、自分に合った治療法やケア方法を見つけることが大切です。軽度のニキビであれば適切なスキンケアと生活習慣の改善で改善することもありますが、症状が重い場合や改善しない場合は、早めに皮膚科を受診しましょう。
また、ニキビができてしまった場合も、自己流で潰したりせず、適切な対処を心がけることでニキビ跡を残さずに治すことができます。
ニキビは一時的なものではなく、繰り返し発生することもある慢性的な疾患です。短期間での改善を期待するのではなく、長期的な視点で対策を行うことが重要です。
皮膚科での適切な治療と、日常的なスキンケア、健康的な生活習慣を組み合わせることで、ニキビのない健康な肌を目指しましょう。
ニキビでお悩みの方は、ぜひ当院にご相談ください。皮膚科専門医として、あなたのお肌の状態に合わせた最適な治療プランをご提案いたします。
詳細は駒沢自由通り皮膚科のウェブサイトをご覧いただくか、お電話でお問い合わせください。

監修:白石 英馨(しらいし ひでか)
駒沢自由通り皮膚科 院長・日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
東京慈恵会医科大学医学部卒業後、同大学附属病院や関連病院にて皮膚科診療に従事。アトピー性皮膚炎やニキビといった一般皮膚疾患から、ホクロ・イボの外科的治療、美容皮膚科領域まで幅広く経験を積む。
2025年3月、世田谷・駒沢に「駒沢自由通り皮膚科」を開院。小さなお子さまからご高齢の方まで、地域に根ざした“かかりつけ皮膚科”として丁寧でわかりやすい診療を心がけている。
- 所属学会:日本皮膚科学会、日本美容皮膚科学会 ほか
- 専門分野:皮膚科一般、小児皮膚科、美容皮膚科、日帰り皮膚外科手術